添景(TOMOO - Super Ball)

 大学では都市計画の学科にいたのですが、卒業するにあたり、通常の理系大学生であれば卒業論文を書くところ、私のいた研究室では卒業論文の代わりに卒業設計を作る人が多数派でした。私もその例に漏れず卒業設計を作って大学を卒業させてもらいました。

 卒業設計では最終的な成果物として模型を作ります。(といっても模型にたどり着くまでにウンウン考えて結局模型にかけられる時間はあまり取れずに、大学に泊まったり徹夜したり銭湯に行ったり先輩・後輩の協力を得たりしながら模型を何とか作り上げていくわけですが。)

 先生からも設計思想的な抽象的な話から模型作りの具体的な話まで様々な指導をいただきましたが、具体的な話の極致と言えるのが「ちょっと多すぎるかなというくらいでいいから、とにかく人の添景をたくさん置いたほうがいい」というテクニカルなアドバイスでした。

 「添景」という言葉はなかなか聞きなじみのない方も多いかと思いますが、建築模型を作る際に、ファニチャー(家具など)、車、植栽、…そして人間といった「脇役」のことです。「脇役」がいれば当然「主役」がいて、ここでの「主役」は建築になります。卒業設計の最終発表ではプレゼンボードや模型を使ってたった5分で発表するので、模型は卒業設計の出来栄え(のファーストインプレッション)を大きく左右するものになります。「添景」もなんだかすごそうな模型に見せるためのテクニックのひとつでした。

 卒業設計は建築をはじめとした物的環境を設計するのですから「主役」が建築になるのは当然といえば当然なのですが、卒業後に仕事をしてみて思うのは、やはり「主役」は人間であろうということです。

 そもそも人間が生活するために人間が作り上げるものですから「主役」は人間だと思いますし、そこまで堅苦しく考えなくても、いくら素敵な空間であっても人がいなければ物寂しさを感じてしまいます。(よほどモニュメンタルな空間でない限り。)また、下世話な話、その空間を作るために注ぎ込まれた事業費を想像すると、「これだけお金をかけてこれしか人がいないのか…。気の毒だな。」という気持ちにもなります。そういう意味でもやはり「主役」は人間なのだろうと思います。

 少し話は飛躍しますが、まちなかで撮られたMVが好きです。大体の場合、歌手なんかが、まちの中で歌ったり踊ったりしていて、「主役」として輝いているからです。実際に歩いた印象とは違う印象に仕上がっていたりするのもまた面白かったりします。

 

 (そんなわけで、ここまでは前置きなのですが、)最近好きなMVがこちらです。

 幕張ベイタウンの公道の真ん中で踊ってるけど道路使用許可を取っているのかな、一般人が全く歩いてなくて店も閉まってるけど何時頃撮ったのかな、このへんの公道は路上駐車も許容する設計だけど路上駐車全くないな、大学の演習で歩いたな、仕事でも歩いたな…などなど気になることはたくさんあるのですが、素敵なMVです。


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